
4.まとめと課題
スポーツの興味づけとして、まず考えられることは、“楽しさを味わわす”ということであるが、本調査においては、柔道を『好む』生徒は少なく、他のスポーツに比べても『楽しくない』という結果から、動機づけとして指導内容をもっと考える必要があるように思われる。 そのひとつとして、『身体の小さな者』は、柔道が好きである生徒が少なく、体格によって柔道が好きになるかどうかが左右されやすいことが分かった。このことは、『柔道の楽しさは投げること』にあり、その反面『苦しさは投げられること』であるという意見が多いことから、体格的に優位な者の方に投げる場合が多いことが、この段階では顕著であると考えられる。初期の段階では、特にこのことを考えた指導が必要になり、基本技能の習得状況に対応しながら段階的に体格差のある相手との練習をすることが望ましい。しかしながら、部員数の減少により、このような練習形態をとれる学校は少なく、部員数の確保が大きな問題となる。また、生徒は基本練習をあまり好んでおらず、初期の段階での基本練習の多用は生徒に興味を失わせることとなり、そのバランスが課題になってくる。しかし、楽しみにつながる『投げる』という段階に至るまで時間がかかり、他のスポーツよりも楽しさを味あわせにくく、それにも増して柔道はゲーム的要素の少ないスポーツであるので、興味を持たせる工夫の必要を感じる。 これらのことを考えて、一例をあげるならば、基本練習や補強運動にゲーム的内容を取り入れ、楽しませながら習得させ、さらにグループや班分けをして競い合わせることにより、練習意欲を高め、グループ内での責任・役割・協力などを自覚させることによって教育的効果を期待することができる。また、寝技はかたちを教えれば比較的相手を抑えるまで時間がかからないので、早期に興味を持たせることができる。よって、立ち技より先に行い、基本技能の習得をまち、そのうえで立ち技に移り、次第に乱取りや試合練習という応用的な内容にすすめることで、生徒が興味をもって練習に取り組めると思われる。この段階でも、できれば同じ体格の者と練習を行わせて、技能の習得にしたがって体格差のある者とも練習を行わせる。興味づけには、このような形式をとるのがよいと考えられる。 また、聞き取り調査によると、年齢とともに腰を中心とした技が弱くなり、そのときに有効な技は、掛けるまでに時間のかからない足技であり、大技中心の練習をする者が多いなか、もっと足技の練習がされるべきであるということや、寝技は比較的立ち技に比べると高年齢までできるので若い間にもっと練習をしておけばある程度の高年齢まで柔道を楽しむことができるなどといった意見も多かった。 5. おわりに
指導例をもとにして期間は短かったもののいくつかの学校に実際に指導して頂いたところ、既制の練習にあきていたせいか、生徒はかなりの興味を示したようである。しかし、練習内容に遊びの要素が多いこと、体力面でハードであることなど、今までの練習内容との兼ね合いが難しいと思われる。また、それぞれの内容は、生徒の体力や技能の発達段階をみたうえで指導者が選ぶ必要もあり、その力量が問題となる。例えば寝技30秒試合のように全くの初心者からできるものもあれば頭タッチ鬼ごっこのようにある程度の経験や体力が必要なものもある。それらを考えて指導される事が期待される。
前ページ 目次へ 次ページ
|

|